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サラリーマンはいつも時間に追われて、自分を時間に合わせることに汲々としている。プロになることをめざす人は、これを逆転して時間を自分に合わせるコツをつかむことが必要だ。例えば、私が毎朝通ったスタンフォード大学の前のスターバックには、午前中いっぱい居座る常連の作家やエンジニアや研究者がいた。彼らはおそらく朝型人材で、ベストタイムの朝一番を創造的な作業にあてようとしていたのだ。同じ場所で起業家とエンジェルが、ベンチャーキャピタルにプレゼに行く前の真剣な打ち合わせをしている場面にも出くわした。ベストタイムを、ここ一番の勝負の打ち合わせに使っていたのだろう。他方、夕方私がよく通ったカフェ・バーには別の人種がいて、「空想を膨らますにはお酒を飲みながら夕刻のこの時間帯がいい」といって夕日をみながらぶっ飛んだ話に興じていた。私にはこうした人達と逆に、時間に使われ続けた苦い思い出がある。その昔、外務省に勤めていた私は、組織から求められるルーティン仕事に追われていた。いつも「今度時間が余ったら自分がやりたいことをやろう」と思い続けた。だが「やりたいこと」をする時間は決してその勇姿を現わさなかった。自分を時間に合わせ始めると、永久に時間に追われる運命だ。逆に、いったん、「自分に時間を合わせる」というリズムができると不思議なもので、自分の都合に合わない案件も、自分のリズムの中で流れるように消化されていく。少なくともそんな気がしてくる |
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