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● 即興劇:自信を誇示しすぎれば反感を買う。
へりくだりすぎてもみくびられる
(夕刊フジ掲載:2001年11月22日)
私は、最近、「即興劇(improvisation)」にこっていて、ライアンという女性の役者でドラマを教えている人からレクチャーを受けている。即興劇で使われるスキルは、採用インタビュー等に応用したり、創造性を高めることに効果があるとされている。私が習ったことの中で、最も印象に残っているのは、二人の人間がやりとりするときに自然にできる上下関係だ。どんな人とペアになっても、必ず、無意識のうちに、片方が高い地位(ハイ・ステイタス)をしめ、相手は低い地位(ローステイタス)にされる。茶目ッけのあるライアンは、彼女の上司で、いつもハイ・ステイタスをしめようとしてこわもての上司ジョージに、即興の技を使って、意地悪をしたという。彼女は給与の値上げと新しいポジションを得るために、ジョージに面談を求めた。面談のあいだ中、ラインは、即興劇のスキルを応用して、首から上を微動だにしなかった。首から上を動かさず、相手の目をずっと見つづけることが、相手に対して高い地位を保つ秘訣なのだ。いつもは、こわもてでいばっている上司は、相手からこんな態度をとられたことがないので、面談がはじまって1分もしないうちにそわそわしだした。5分くらいで、ライアンの要求はすべて通った。おまけに、あとでジョージの秘書からきくと、面談から戻ったジョージは真っ青な顔で、「今日は気分が悪い」といって早退した。翌日も、鬼の霍乱でジョージはお休み。ライアン自身、即興ドラマのプロなのだがこんなにきくとは思わなかったという。反対に、自分の方が低い地位をしめ、相手に高い地位を与える技もある。それは、ひたすら相手のいうことにうなづきながら、相手のいうことを聞く、のだという。積極的傾聴とかいわれる手法である。問い詰めるようなききかたでなく、うなづきを中心として相手のことをきくというのは、無意識のレベルでも、相手への尊敬のメッセージをおくることになる。さて、あなたの職場で、誰かと誰かが会話しているのを観察して、どっちの「地位」が高くなっているか観察すると面白い。長身で美人のメリーがぐっと胸を張ったポーズで、椅子にすわっている上司のボブを見下して、「地位」が逆転しているなんて例にお目にかかるかもしれない。就職インタビューについていうと、インタビュー相手に対して、自分の「地位」を同等に保つことが合格率を高めるという調査結果もある。自信を誇示しすぎると、評価者の反感をかう。他方、へりくだりすぎると見くびられる。「地位」のコントロール力があなたの一生を左右するかもしれない。 |
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