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● 始めに浮かんだアイデアをそのままが大事:
即興劇セミナーに参加
(夕刊フジ掲載:2002年1月10日)
私は、「即興」劇のプロが主催するクリエイティビティーのセミナーにでた。
「即興で何かやってごらん」といわれると、素人の私は、すぐに、何かクリエイティブで面白いことやらなきゃ、と身構えてしまう。たとえば、即興の練習で、私はパートナーから「夕食をなににしょうか」といわれて、なんとかオリジナルなアイデアを即興的に考えようと必死にあがいた。パートナーが結構美形だったこともあって、私は、「キャメルってなんてユニークでクリエイティブなの」といってもらいたいから、すぐに「クリエイティブでオリジナルな変わったことを思いついて驚かしてやろう」としてしまう。結局苦し紛れで「人魚の唐揚げはどう」などといってしまった。練習の後、インストラクターから次のような説明があった。「即興では、はじめにうかんだ素直なアイデアをそのままいうことが大事です。もし、夕食は魚、とおもったら迷わずに、即、「魚」といえばいいのです。魚じゃあまりにつまらない、即興だから面白いこといわなきゃ、というのが即興をさまたげる囚われです。」「何をいうかは、実はさしたる問題ではありません。即、思いついたことを素直に出すのが重要なのです。」
少しわかった気になった私。次のゲームは、20人くらいが輪になって座り、順番に、先週末にやったことを話す、ただし、隣の人がやったことをうまく受けて、自分のやったことを話す、というものだった。私は、私の順番がまわってくるまで、他の人の出すアイデアなどほとんどきかないで、「何か面白いことをいってやろう」と必死に考え続けた。これが最悪。隣の人のいったこととぜんぜんつながらない、わけのわからないことをいうハメになった。どうもほかの参加者も同様だったようで、インストラクターから「順番がきて、そこではじめて、自分が週末にやったことを考えて発言するのが即興。順番がくるまでずっと何をいおうか考えていたら即興になりません。ずっと考えてしまうと通常の思考回路に逆戻りしてしまいますよ。即興の達人は、その場で自分が思いついたことをいうので、自分がいったことに自分でも驚くのですよ」
今度こそわかったと思った私は、家に帰ってから、本の原稿をかくのに即興術を応用してみた。しかし、いっこうに「自分で驚く」ようなものは出てこない。焦るばかり‥。「面白いことをいうために即興を使ってはいけない。それは余計な計らいです」というインストラクターの言葉を思い出した。 |
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