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  夕刊フジ
■No.1 テロ
■No.2 家族
■No.3 お金
■No.4 炭素菌新
■No.5 失業の女
■No.6 ストックパワー
■No.7 コミサ
■No.8 即興
■No.9 ドライバー
■No.10 西村
■No.11 キッシンジャ
■No.12 エレベーター
■No.13 即興劇
■No.14 怒り
■No.15 散歩
■No.16 パワー
■No.17 飛び級
■No.18 NLP
■No.19 失敗
■No.20 ベッキ2
■No.21 フィードバック
■No.22 ゴキブリ


 
夕刊フジ  【20】 ベッキ2
●  たくさんの自分像を用意、売り込む
(夕刊フジ掲載:2002年2月28日)
シリコンバレーも失業者があふれている。でも暗さを感じない。なぜか?そこに生きる個人個人の「したたかさ」に秘密がある。
米人のカリーナは、米国のMBAと東大の政治学の修士をもつ才女。これまで米日の企業や国際機関で事業開発やマーケティングをてがけてきた。その彼女も、ドットコムバブル崩壊のあおりで浪人の身となり、2年間定職にありついていない。一昨年の年末はシスコのM&A部門で採用されかけたが、シスコがリストラを開始し棚上げとなった。その後、日本企業に採用されたが、そこもリストラとなりまた浪人となった。どうせ暇してると思って私が彼女の携帯に電話したら「あさって4時半から5時まで30分ならいいわ」とやけに忙しそうだ。失業中なのに忙しい?実際会ってみると、朝から晩までジョブハンティングをしているという。履歴書を何種類かそろえて、ジョブサーチのサイトにサイトの特性に合わせたものを送る。就職説明会や求職者のジョブパーティなどに出る。日本関係の会合にも顔をだしてネットワークをひろげる。その合間に自営のコンサルティングをやる。最近のビジネスの動向やスキルアップのための研修にもせっせと出る。子供相手に、彼女の従来からのテーマの「次世代リーダー開発」の非営利の仕事も続けている。私と話している間も、どんどん電話がかかってくる。チャーミングなカリーナの顔をみながら「そうか。失業中のかわいそうな女性じゃなくて、次の飛躍をねらって仕込み中のしたたかな女なのだ」と私は悟った。「したたかさ」の本質は何か?それは、自分を変えていくパワーと、状況を変えていくパワーの組み合わせである。したたかさをもたない人だと、状況に流され自分を見失う。あるいは逆に自分の型に意固地になるから状況にあわない。したたかな人は、一方で沢山の自分像を用意する(複数の履歴書)。他方で、採用面接で、単に、いわれた仕事(状況)を自分がいかにうまくできるか、だけの売りこみだけでなくて「御社なら、こういう仕事がこれから必要なはず。市場は今こうなっているし、競合ではこんなことも始めてますよ。私はそこのやりかたもわかっています」といって事業開発提案と合わせて自分を売り込む。相手がだしてくる仕事(状況)を、自分の得意技が生かせるように再定義してしまうのだ。状況と自分の両方の変数を動かせばヒット率があがるという寸法だ。でもほんとうかな?内部事情をもっと知りたくなった私は、知り合いのヘッドハンターに彼女を紹介するメールを送った。




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