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● キャリアにも飛び級:したたかさ・柔軟さ・集中力
(夕刊フジ2002年2月7日掲載)
ある米国人CEOの話をきいていて、「そうか、キャリアにも「飛び級」があるんだ」と気付いた。彼は、ヴェリタス・ソフトウエアというデータ・ストレッジ企業の社長のゲリー・ブルームという男だ。まだ40歳そこそこで、社長になって2年目にはいる。ドットコムバブル崩壊、同時多発テロ後の危機を乗り切り、成長と利益の両方を実現させている。彼の成功要因は何か。私がみるところ、キャリア形成の才能である。一見して凄いという感じの人ではないが、絶妙のタイミングで自分のキャリアで、飛び級をつづければ、こんな素晴らしい経営者が20年足らずの仕事経験で生まれるのだ。
ゲリーはカルテック大でコンピューターサイエンスの学位をとった後、IBMに入社するが、数ヶ月でIBMの堅さが自分にはあわないと感じすぐ辞めた。その後、シェブロンとオラクルに勤める。会社を変わったことよりも、幅広い職務を、次々に経験したことに私は注目する。技術職として、ハードウエアに近いメインフレーム分野からデータベース関連のソフトの分野まで幅広く経験する。さらに、技術者を越えて、顧客サービス、マーケティングといった水平的な転職をこなす。その間、個人プレイヤーから50人の部下から2000人の部下をもつ各種マネジメント職まで経験する。しかも、この転職のピッチも早い。個人プレイヤーの間は、早いときは、6ヶ月で転職し、マネジメント職になってからは、結果がでる1年とか2年とかの区切りで次の職務に移っている。さらにヴェリタスで社長になってから2年たらずだが、ドットコムバブル崩壊と同時多発テロ事件のおかげで「社長20年分の経験をした」故に、若々しく安定した自信に満ち溢れている。
ゲリーの成功をささえた中心要素は、自分のキャリアを形成していく「したたかさ」だ。「したたかさ」は、キャリアを振る「柔軟さ」と、ある仕事を短期間でマスターしてしまう「集中力」の絶妙の組み合わせから生まれている。
「キャリアを転換する飛び級」とは、勤務先企業を変えることではない。勤務先を変えるかどうかは二次的で、大切なのは、自分が主体的かつしたたかに新しい職務にチャレンジし続けることだ。人事部のいう通り従順に異動し、挙句のはてに、「会社のために動いたが報われなかったと」いうのは自分のキャリア形成責任を放棄した負け犬の遠吠えだろう。
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