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● 散歩しながらコミュニケーション
(夕刊フジ掲載:2002年1月24日)
人との話を円滑に進める方法として、「一緒に散歩しながら話しこむ」というスタイルがある。日本ではあまり使われないが、海外ではよく使われる手だ。私が外交官をしていたときも、各国の首脳が、2人で、公式会談の合間とかに庭を散策して、そこで大事な密談をする、という話をしばしばきいた。英語ができない日本の政治家の場合、この奥の手が禁じ手になっていて、ハンディキャップをおっている。実際、私もエジプトのピラミッドをみながらとか、サウジの砂漠の中で、とか思いでに残る散歩会話がある。昨年は、フランスの田舎のお城で、会社の関係の会合があり、ディナーの前に庭にでてワインをのんでいると、役員の一人が私に近づいてきて、ちょっと話をしようといって、庭の誰もいないほうにむかって歩き出した。私が米国にきてあまり米国側に協力していないので、私の真意をきこうとしたようだ。結構厳しい内容だったが歩きながらだったせいですんなり会話できた。
これは、身近な人との間でも効果的である。結構、厳しい話しをするときや議論するときに、歩きながら行なうと、袋小路にはいったり意固地になるのを防ぐ効果があるようだ。おそらく風景がかわっていくこと、体が動いていること、それでいながら、二人で同じ方向にむかって同じ景色をシェアしながら一緒にすすんでいくこと、歩くペースをあわせるからリズムもそろうこと、とかすべてが話をしやすくしてくれるのだろう。ランチや夕食で仕事の話をした後、5分くらいでも一緒に歩いてその続きをすると思わぬ収穫がでてくる。場とリズムが変わるからだ。私が最近キーワードにしている、人間関係の基本としての「並んでジョギングする関係(並走関係)」もこれがヒントになっている。
余談だが、妊婦にとって自分のペースで、歩くというのが非常にいいようだ。買い物とか目的をもたずに、ただ、自分のペースで歩くのです。残念ながら私にはその体感はないが、このアドバイスは妊婦からは好評だ。もちろん、ここではおかあさんと赤ちゃんがゆっくり一緒に歩いて、いろんなことをあわせていくわけだ。あなたも、まず、子供とか友人で実験して、難敵の上司、顧客、そして最後に配偶者を攻略してみてはどうか。頭だけでなく、足を使って。 |
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