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● ゴキブリから受け継いだ「人前では安全策」:
自分のスタイルで時間を忘れて考え抜く癖をつけろ
(夕刊フジ掲載:2002年3月14日)
ゴキブリをつかった傑作な実験を紹介しよう。
Eの形をした迷路をつくってゴキブリがどれくらいの時間で走りぬけるかという実験をした。ゴキブリが一匹だけだと、2分間で走りぬけた。2匹のゴキブリをペアにすると6分かかった。3匹のゴキブリを一緒にすると9分かかった。なぜこういう差がでたのか、一人、いや一匹、の方が速く学習できたのか。その答えは、「他のゴキブリが一緒だと、ゴキブリの前で失敗したくないから、それまでなれ親しんだ方法でことをすすめる。新しいことをして失敗するリスクをさける。一匹だと新しい方法にチャレンジして結果的に速くなる」ということらしい。実は、このゴキブリの話は、スタンフォードのビジネススクールの先生が本で引用している話だ。その先生によると、「仲間が一緒だと新しいことをやらなくなるというのは、人間にもあてはまる。他の人がみているとうまくやろう、失敗したくないという気持ちがおきる。そこで自分が慣れ親しんだ方法に頼り、新しいことには手をださなくなる」といった心理が働くようだ。「出る釘は打たれる」というのは日本だけかと思っていたがとんでもない。米国でもこれがある。いや、私達人間は皆、ゴキブリという古代生物からこの性質を受け継いでいるのだ。だから、人前だと、8割以上の人は、安全策をとる。そればかりじゃない。人間はゴキブリより賢くて知恵を働かせる。「人と同じやり方で失敗したのなら、失敗の責任を、前例や仕組みのせいにできる。私が悪いわけじゃないと。でももし私がこれまでにないやりかたで失敗したらそれは紛れもなく私のせいだ。言い逃れができない。だから、失敗しそうなときは必ず今までに誰かがやった方法でやろう」と。これでは新しい試みはでてこない。
こうした逃げの気持ちを起こさないためには、他の人の目から自分を隔離する必要がある。人の目を気にせず、自分だけで考えぬく必要がある。寝てもさめても、そのテーマについて、他人の目に邪魔されずに考え続けることができるか。それが勝負だ。腕組みして歩き回りながらでも、寝ながらでも、車を運転しながらでも、どんな形でもいいから自分のスタイルで時間を忘れて考え抜く癖をつけることが大切だ。もちろん、ある段階まで達したら人に相談することも必要だが、それが早すぎると、ゴキブリから受け継いだ防衛本能が、あなたの素晴らしい考えの誕生に急ブレーキをかけてしまう。 |
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