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上海の風:第九回
  再び圏子  (2004年11月3日)

上海の風の第一回で、「圏子」というコンセプトを紹介した。友人で中国通のジャーナリスト兼人材コンサルタントの田中信彦さんの見方によれば、中国社会とは、「個人とその仲間たち」が単位となっている社会で、その仲間サークルのことを圏子とよぶ。
さて、最近、中国人とあうたびに、この漢字をかいてどんな反応をするかみている。まだサンプルが限られているが、どうも、外国のことを知っている人で、中国人の組織の特徴について相対的な感覚をもっている人は、圏子という言葉に反応していろいろ説明しはじめる。
Zさんは、日本語に堪能で、旅行会社に勤めながら、自分の会社も経営している。以下は、Zさんが話してくれたことである。
「圏子なしで、中国人の組織は語れません。それは、インフォーマルに、自然にできてしまいます。たとえば、会社の中でも、いくつもの圏子ができています(ここまできくと、私の頭には、なんだ、「派閥」のことか、と思えはじめる。ただ、ちょっと違うみたいだけど)。たとえば、ある課の中で、課長が中心で、その課の中で、気心のしれた数人だけが、圏子にはいります。もし、この課長の業績がよくて、別の地域に栄転させてしまうと、彼がいた課の圏子がうまく機能しなくなって、その課の仕事に支障が生じます。また、異動した課長も、圏子の圏内からはずれて、なかなか業績をあげることができなくなります。中国人のトップは、だれとだれが圏子にはいっているか、その中心人物はだれか、そういう圏子のあいだのバランスはどうかなど、すごく考えないとだめです」
「若い人も、同じ組織に長く所属していると、圏子をつくったりはいりはじめます。」
「私も昨年、ある大学のエグゼキュティブMBAのクラスで、総経理たちと仲良くなり、その連中と、週末集まっては、こんな事業はどうだろうか、といろいろ起業の話をしました。そしていくつか始めたのですが、運悪く、SARSにぶちあたり、すべて失敗しました。上海で事業を起こすのは簡単じゃありません。競争がすごく激しいし。このMBA仲間も一種の圏子なのですが、中国人同士の圏子は、友人でとどまる限り問題ないのですが、それをつかって、商売をしようとすると、よく関係がこじれます。だから圏子をつかって商売やるのは、もうこりごりです。」
「でも、外国人と圏子をつくって、パートナーシップで事業やるのは、いいかなと思っています」
私の目がきらっと輝いたのをみて、「でも、私は、あまり力がありませんから、キャメルさんには、私の友人ですごくできるW君を紹介します」といって、その場で、携帯で電話をかけて、その彼につながると、携帯を私にわたして、「さあ、どうぞ、アポイントをとってください」といわれた。私もちょっとめんくらいつつ、ぼろぼろの中国語で話かけると、W氏から、きれいな英語で返事が返ってきた。お互い、海外出張で、すぐにはあえないが、11月中には、会いましょうと約束ともいえない、約束をして電話をきった。面白いのは、W氏が、「キャメルさん。Zさんを通じてアポをとってください」といって電話をきったところだ。私は、まだ、W氏からみて圏子でもなんでもないから、W氏の圏子仲間のZさんを通せということなのだろうか。
私の会社の同僚で、組織論にくわしい台湾出身のU女史も、「中国の総経理(社長)は、いつも、圏子のバランスをとることを考えているのよ。頭の容量のかなりの部分、それにつかわなきゃいけないから、中国人は 大変よ」とこの間いっていた。会社の連中とみんなで円卓を囲んで中国式の食事をしているときに、私が紙ナプキンに「圏子」とかいて、「これって、そんなに大事」とまわりの連中に質問したとき、U女史は、席がちょっとはなれていたが、わざわざ説明してくれた。若いコンサルタントは、「古い話に関心ない」というふうで、あまり反応していなかった。
インフォーマルな組織は、何も中国に限ったことではない。でも、どうも、その威力が、すさまじいのではないか、と最近、いろいろな場面で思い当たりはじめた。



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