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上海の風:第五回
  アジアカップでかいまみた反日感情  (2004年8月15日)

オリンピックたけなわだが、そのちょっと前に、中国で開催されたサッカーアジアカップをきっかけに考えた、中国における反日感情について少し書いてみたい。アジアカップの決勝戦は、中国でビジネスをおこなっている人にとっては、最悪の組み合わせとなった。日本対中国である。私は、夜は、まじめに、外でだれかと食事することが多いが、上海の日本総領事館から注意をうながすメールがおくられてきたこともあって(付録参照)、その夜は、自宅でサッカー決勝戦をテレビ観戦することとした。
さて、試合はご存知のように日本が勝った。私がみていたNHKの衛星放送では、試合後、確か解説者が、「日本は、敵地で、不利な審判なもとであるにもかかわらず勝利した。」という趣旨のことをいって、たとえば、オフサイドの判定などで、日本側に不利なジャッジがあったことをあげていた。ところが、例のハンド問題もあり、翌日、中国側メディアの格好の餌食となった。中国側のメディア(翌日の新聞を何紙かみた)は、いずれも、いかに、中国側に不利な審判だったかを書き立てていた。ハンド問題はもちろん、1点目の得点にも、3点目の得点にも難癖をつけていた。ことさら反日感情をあおるような論調ではなくて、もっぱら、テクニカルな問題についての不正な審判というところに焦点をあてているように、私には思えた。ある意味の抑制が働いていた。日本人選手のずるさにも言及しているが、日本人選手を攻撃するというより、審判の不公正さをなじるというのがメインの論調だった。むしろ、中国側メディアは、試合の前から、日本側の報道が、中国人の反日感情や反日行動をあおりすぎている、サッカーの試合は、どこでもナショナリスティックになるので、ある程度のことはむしろ当然である、という書き方をしていた。そういう報道ぶりなので、日本で報道されたように、試合後、一部中国人が日本人サポーターや外交官にどんなことをしたかは、一切触れていなかった(私がみた範囲では)。
さて、私は、その翌日、シンセンにとび、同僚の若いコンサルタント(北京出身)と顧客のシンセンの地元の銀行の人事部長と夕食をともにした。普段ならば、世間話をして、仕事の話になるのだが、そのときは、すぐに、サッカーの話題になった。はじめは、英語で話していたが、すぐに、中国語にかわり、同僚のコンサルタントと人事部長が、ふたりで身振り手振りでなにか話しては盛り上がっていた。私は、名案もうかばないので、中国語のヒアリングの練習をすることにしてだまっていた(ほとんどわからなかったが、かなり興奮していることはわかった)。
中国側の反日感情については、その根は、日本が中国を侵略したことと、侵略した上でおこなった行為にある。その程度については、諸説あるにせよ、そういうことがおきたことは誰も否定できないだろう。また、戦後も、賠償問題ですっきりけりをつけることもできなかった。さらに、90年代以降は、共産党政権が、反日感情も含めたナショナリズムを、統治の手段として利用している面もなくはない。ソ連東欧の共産主義が崩壊し、中国側が、改革開放路線にむかうなかで、中国共産党は、毛沢東思想や共産主義にかわるものとして、ナショナリズムを統治の手段と位置づけている。ナショナリズムには、仮想敵が必要である。おまけに、日本側のこころない(あるいはセンスのない)政治家が、あたかも中国当局のナショナリズム強化の手助けでもするかのように、靖国神社訪問など通じて、歴史を継続的にリマインドしている。とくに、若い人の間では、教育とインタネットがくみあわさって、歴史が再生産かつ増幅されているようだ。
さて、教養ある中国人は、日本軍と日本人を区別してくれるが、一般的に、反日感情があることをわきまえた上で、行動することが不可欠である。普段つきあっている中国人の友人や顧客の顔に「反日」などとはかいていないが、今回のサッカーは、その可能性をリマインドしてくれた。他方、私は、なにか小さなことでもいいから、中国の人のためになることができないかなと考えはじめた。これは、反日感情をまのあたりにしたからではなくて、最近、知り合いが書いた大来三郎さんの分厚い伝記をよみ、彼が、中国の現代化に相当の貢献をしたことに刺激されたものである。中国問題に限らず、「現実の直視」と、「純粋な思い」のバランスが大切だと思う。


付録:
サッカー・アジアカップの決勝戦に関連したご注意
                        在上海日本国総領事館

1. 8月7日(土)20時から、北京において、日本と中国との間でサッカー・アジアカップ決勝戦が行われる予定です。重慶で行われたサッカー・アジアカップ予選リーグ及び準々決勝においては、一部の日本人サポーターに罵声が浴びせられたり、紙屑等が投げられる事態が発生しました。

2. 今回のアジアカップ決勝戦に備え、日本政府は、何度も中国政府に対し、邦人の安全確保について強く要請してきていますが、特に8月7日の夜に中国に滞在される方(旅行者及び在留邦人の方々を含む)は、次の点を含め、十分ご注意ください。

 重要事項
  ・テレビなどの報道に十分注意する。
  ・広場など大勢の人が集まるような場所に近寄らない。
  ・興味本位で群衆に近づかない。
  ・目立つ服装や日本代表のレプリカユニホーム等シンボル的な物の装着はなるべく避ける。

3. なお、不明な点等がございましたら、当館領事班
(電話:021−6278 −0788、夜間:800−820−3609)までお問い合わせ願います。
当メールアドレス(soryojikan@163.net)への返信及びお問い合わせは、ご遠慮下さい。



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