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上海の風:第七回
  マニラの中国式マネジメント  (2004年10月15日)

中国は、10月1日から一週間、国慶節の休みだったが、私は日本製の手帳をつかっているせいで迂闊にもこの休みに気がつかなかった。おかげさまで、浜松近辺の日系企業とフィリピンの日系企業関係の仕事をすることになった。はからずも、日本とフィリピンの仕事を通じて、上海(中国本土)の風が、そうしたところでも吹いていることを体感した。
9月25日、東京駅からワイアットの東京オフィスがある半蔵門までタクシーにのった。運転手は、多分60歳をすぎた話し好きの人で、私は疲れていたが話し続けることになった。というのも、彼が、上海のことをまるで上海帰りみたいによく知っていて、「F1の場所は、この間まで沼地だったんですか」みたいな質問をされたからだ(9月末、上海の郊外で、F1が開かれ、上海はその話でもちきりで、私もちょっとのぞいた)。なぜそんなに上海に詳しいのかときくと、「最近は、ほぼ毎日、ひとりは、上海がえりをのせるんですよ」。商社の人とか出張で上海にいく人はきわめて多い。私みたいに、単身赴任も多いに違いない。しかも、日本のテレビをみていると、必ずといっていいほど、上海や中国に関係した番組がある。
10月3日から3日間、フィリピンのマニラにいった。そこでも、私は、「中国の風」から逃れることができなかった。マニラにあるクライエントの日本企業とは、同企業のアジア全体の事業について、ちょうど私が、昨年7月、中国に赴任するころからプロジェクトをはじめた。同社のアジア地域における新しい経営の方向性にあわせた組織や業務プロセスや人材マネジメントの変革のお手伝いをしてきた。私は、同僚の鈴木康二さんと一緒にこの仕事をしているが、彼は、いま、タイのバンコクに駐在している(私と同じように、タイと東京を往復している)。地図をみていただくとわかるが、上海は、マニラの真北で飛行機で2.5時間。バンコクはマニラの真東で飛行機で2.5時間。東京は、マニラから、東北の方向になり、マニラから4.5時間。マニラは、東アジアと東南アジアの中で、非常に便利な場所にある。私の会社で、アジアのリーダークラスが集まる場合も、マニラになることが多い。
さて、そのマニラで気づいたのは、中国人の影響の強さである。ここは、中国の福建省出身の人が多いらしいが、フィリピンのトップ企業の多くは、中国系である。クライエント企業も、もともと、中国系のオーナーと日本企業の合弁企業だった。2日間、その会社の日本人幹部とフィリピン人幹部にインタビューをしながら、ワイアットのフィリピンのオフィスのコンサルタントからも話をきいているうちに、中国系企業の特徴の一面がみえてきた。それは、私が、中国において、すでにきいていたことなのだが、海外(中国の外)できくとより明確にわかる。ちょうど、日本企業の特徴も、海外の日本企業をみるとより先鋭にわかるのと同じだ。
海外における中国系企業と日系企業には、まず大きな共通点がある。それは、どちらも、「属人的な経営」を行う点だ。日系企業や中国系企業には、米国企業にあるような職務記述書など「無い」のが普通だ。米国企業だと、職務記述書がないということは、まずありえない。それがないと何もはじまらない。採用もできない。日系企業や中国系企業では、採用でも、簡単な要件くらいはかきだすが、職務記述書みたいながっちりしたものにならない。だいたい、日本でも中国の伝統企業でも、本国において、職務記述書がベースとなったマネジメントなど行っていないから、それを海外でやるなんて不自然だろう(それは必要なのだが努力がいる)。
日系企業と中国系企業が似ているのは、「属人的」で「暗黙知の世界」であることにとどまらない。どちらも、企業は「家族的」である。このクライエント企業では、ときにおうじて、中国系オーナーの影響が強く出る場合と、日系マネジャーたちの影響が強くでる場合があるが、いずれも、家族的、という点では共通している。
ところが、「属人的で家族的」という切り口からみると似ている日系企業と中国系企業は、実は、似て非なるものの典型だ。
中国系企業は、オーナーがお父さんとして君臨する、トップダウンの家父長的な企業である。これにたいして、日本企業は、もっとフラットでチームワーク重視の現場主義を特徴とする。だいたい、日本企業のトップとか幹部社員は、せいぜい5年もいたら、異動する。
日系と中国系の間で、暗黙知・属人的・家族的の、コンテンツがそれこそ陰と陽のように異なるのである。
ついでに、形式知・仕組み重視・ビジネスライクを特徴とする米国企業にも、陰陽があるのだろうか?陰をかりに、「階層的」とよみかえ、陽をかりに「フラット」とよみかえる。
ここで、2×2の4分類(「陰(階層)・陽(フラット)」×「形式知・暗黙知」)ができて、ほかのケースも考えてみたくなるが、風向きがおかしくなりそうなので、筆をおく。



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