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上海の風:第二回

 私が、中国にきた理由の一つは、「成長」を目撃することだ。確かに、上海とその周辺をみていると、「経済成長」という「歴史」を現在進行形で味わえる、と実感している。

 まず、上海自体、郊外にむけてどんどん拡張している。特に、90年代初めに計画され、その後、90年代後半になって本格的に開発されたプトン(浦東)は、以前は、文字通り原っぱや農地だった。そこに、大胆な都市計画をつくり、外国の建築家の間でコンペし、外資をいれて開発した。立役者は、当時の上海市長で、その後、首相になった朱容基(zhu rongji)だといわれる。なかなか外資がのってこなかったなかで、今はなきヤオハンが進出をきめ、それが呼び水となった。だから、ヤオハンの和田一夫さんは上海の名誉市民である(最近、私は、和田さんが上海の自宅で開校した経営塾に塾生として参加しているが、その様子はまたいずれメルマガで紹介しよう)。浦東は、まさに、白いキャンパスの上に、現代都市の絵をかき、それを実現したきわめてモダンな世界だ。その中のいくつかある開発区を訪れればその大きさに圧倒される。

 上海に観光にくれば、ブンド(外灘、ワイタン)をおとずれ、川(黄浦江 huang pu jiang)をはさんだ向こう側に、この未来都市的な浦東の高層ビルを眺める。こっち側(川の西側で、プシーとよばれる。プはプトンのプと同じ漢字で、シーは西だ)。面白いのは、西岸のとある高層ビルの上のレストランからの眺めだ。東側をみれば未来構想都市、反対側をみれば昔ながらの長屋的な家並み、という新旧のコントラストを味わえる。これは、いまの上海を一望のもとに要約している。

 私は、単身赴任できているから(いつか、この単身赴任というコンセプトについても、いろいろ考えをめぐらせつつ実験しているので、このメルマガで話すことになるだろう)、週末は、必ず、町ウオッチをする。適当に地下鉄にのって適当な駅でおりて歩く、それだけだ。単に、私が調べていないからということもあるが、必ず、何か「驚き」にめぐりあう。この間は、うちから歩いて、延安路にそって、石門一路にはいり、すぐのところをすぐに右にはいった。別に何かお目当てがあったのではなくて、なんとなく。すると左側は、高層ビル建設中で、高級オフィスやマンションができかかっている(分譲もはじまっている)。そっちは、工事中みたいなので、左側をあるいていると、地下にむけて矢印がついたところがあって、導かれるまま地下におりていった。野菜のにおいと強烈な生き物のにおい。生きた魚、亀、ニワトリ、がうじゃうじゃ存在する自由市場であった。東南アジアではウエットマーケットといって、こういう市場がいまだに流通の中心になっている。中国も、つい最近までは、このウエットマーケットが中心だったが、近年急速にモダントレード化がすすんでいる(カルフールやウオールマートやヨーカ堂、ローソンなど)。新聞記事などでは、衛生面のことを考えて、ウエットマーケットをモダントレードにおきかえる政策だなどと報道もされている。さて、この自由市場で、私は、好物のカシューナッツ(漢字では腰果とかいて、ヤオクオとよむ。このとき、この単語はしいれた)をかった。同じ値段でコンビニでかう5倍はある)。

 自由市場からでてそのまま道を歩くと、甕(カメ)が並んだ店がある。いいにおい。それは紹興酒(一般的な名称としては、ホンチウ黄酒)などのお酒がはいっている。さらに数十メートルいくと、緑にかこまれた公園の入り口にきた。水 の音がするのではいってみると、花嫁姿の人が、人工的な滝のそばで写真をとっている。

 この道に限らない。5メートルくらいの道の両側で、過去からずっとある市場と、未来にむかった高層モダンビルというのが、いずれも、現在としてしかと存在する、それがいまの上海だ。このように一般化するとそれだけのことだが、上海の面白さは、この左右の過去と未来のメニューがいろいろ変わる点にある。ときに、左側は、長屋で、そこをあるけば、昔からの生活がそのままある。右側はときに高層オフィスビルだったり、銀座と表参道をあわせたような通りとそこを歩く東京の娘よりあかぬけた女性だったりする(そこに、いま、まさに奥地の田舎からきましたみたいな子やパジャマ姿の老人がまじる)。

 子供の成長も同じだが、成長中のものには驚きがある。成熟した東京からきて、いまの上海で暮らすと、驚きに出会う。そして、その驚きとともに、過去、現在、未来が交錯する都市空間のなかで、「存在と時間」の意味を考えざるを得なくなる。



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