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上海の風:第三回

今日は熱いから、硬い話はやめて柔らかい話をしよう。
2ヶ月くらい前、上海の私のマンションから歩いて数分のところで、いつもその前を通っている、とあるクラブにふとはいってみた。クラブといっても、入り口の幅は1メートルくらいで、表にでている表札も、注意してみないと見落とすようなところだ。一流クラブからはほど遠い。玄関もなく、ガラスのドアをおしあけたあとは、階段があって、地下におりていく。ちょっと曲がると、お金の精算をするカウンターがあり、そこをすぎてちょっと歩くと、いきなり黒い服(ドレスだが多分安物)をきて袖なしで腕をあらわにした(あらわなのは腕だけです)女性が、うようよいる。あれは確か日曜日の午後7時すぎだった。しまった、と思ったがもうおそい。そこは、カラオケ・クラブだった。中国のカラオケは個室になっていて、いろいろなサービスがあるとはきいていたが、キャメルは、カラオケが苦手なので敬遠していた。もし、そこがカラオケだとわかっていれば絶対にはいらなかった。しかし、いったん、そこに足を踏み入れたのが運のつき。カラオケ用のセットがそれらしく置かれた小さな個室に通され、ソファーにすわって待っていると、ざわざわときゃっきゃっという声がして、個室の狭いドアから、黒いドレスの若い女性たちが、どっとはいってきた。30人以上。部屋の外にまであふれている。その若さと自分を売り込もうとする熱気に圧倒されていると、ママさんらしき女性(30代前半)が、「誰かを選んでください」と自然な日本語でいう。キャメルはひとりでいったから、周りの人目を気にすることなく、短時間でしっかりチェック。もっとも、こんなときには、日ごろ使い慣れたコンピテンシー・モデルはまったく役にたたない。稼ぐ人を見分けるのにはなれているが、自分に気に入る女性を見分ける基準はもちあわせていない。基準がないと、どれを選ぶかかなり迷うし、間違うのだろうか。そういえば、この経験は、ずっと昔どこかで味わった。あれは、20代のころ、中近東のシリアからトルコに、オリエンタルエクスプレスにのって旅行し、列車で一緒になったアラブ人たちと、トルコ(国名)のある町にいき、そこで、女性たちを、ちょうどこんな感じで選らんだことがあった。アラブの人たちと、選ぶ基準が違うのに驚き、アラビア語の修行もまだ足りないと痛感したことがあった。
さて、上海のカラオケ・クラブの話に戻ると、カラオケ嫌いのはずの私なのに、なぜかそこが気に入った。お客さんや、友人その他と、もっと高級なカラオケバーやらクラブにいく機会もあるのだが、どうも、この、そんなに高くない近所のカラオケ・クラブが肌にあう。らくだという愛称を使うのにふさわしく、質実剛健に育てられた私は、ブランドものをきると肩がこるタイプだ。中国で、にせのブランドものをかうとなぜかココロがやすらぐ。いきつけの偽ブランド店もできた。それと同じ感じをこのカラオケ・クラブに対してもちはじめた。何より、ここは、ひとりでいけば、歌をうたわなくてもいい。こ一時間、若い女性と、1対1で個室にとじこもり、ソファーの上で手をとりあって中国語の練習をすればよい。「語学の習い始めは、ロングヘアディクショナリに限る」と、キャメル自身の説だが、昔、英語やアラビア語を習ったときと違い、今は妻帯者だから、変なリスクはとりたくない。なじみの子はつくらずに、毎回、揺れる基準にすなおに従い、違う子を選ぶことにした(そんなに頻繁にいっているわけではありません)。そのうち、この店の子は、厳しい業績管理をされていることがわかってきた。コンサルティングは、よく、芸者にたとえられるくらいだから(なじみ客ができれば成功するし、客から声がかからなくなれば干上がる)、芸者に限らず、対人サービス業には、商売上の観点からも感心がある。この店の売れっ子は、首からさげたカードに番号がかいてある。若い番号ほど、成績がよい。まだ番号をもらってない子もたくさんいる(まさにnobody扱い)。あるとき、番号1の人を選んだ。彼女は、そんなにすごい美形ではないが、番号をたよりに選んだ。すぐに、なぜトップなのかがわかった。アタマがよくて気がきいて、どこか自然だ。日本語は、かなりうまいが、キャメルがへたな中国語を使いたくてしょうがないのがわかると、中国語で相手してくれる。こっちがつまれば、自然に日本語で助けてくれる。さて、彼女の収入はどうなっているか。固定給はなく、完全歩合制というか、固定のチップだけが収入だ。客は、店に200元(2600円)はらい、3百元(3900円)を定額チップとして女性に払う(ボトルキープすると、それは5百元はらうが、ちょびちょびしかのまなければ何回かはもつ)。この原稿をかくために、彼女に連絡して、数字を改めておしえてもらうと、チップの300元から、あとで店に30元支払う。帰りは、遅いからいつもタクシで、20元の出費。だから一日彼女の収入は250元。月に休みは2日しかとらない。そこで、月収は、250 × 28=7000元。さらに、月間第一位の売り上げだと、ボーナスが3000元。さらに、この彼女は、昼間は別のところでOLとしてはたらいていてその月収が1,500元。全部あわせると、1万元をこえる。実はこの彼女は、人気が高いので、毎日、何回かお客をとれるので、多分、チップは、250元より多いはず。「20000元をこえる?それなら総経理(社長)並の給料じゃない」ときくと(ちなみに中国の日系企業で働く課長クラスの中国人は6000元から10000元程度が月収、経営職でも、15000元から40000元)、笑いながら、「この仕事は、長くはできない。私は、しばらく働いたら、地元にもどってそこで店を自分で開く。地元は、上海から車で数時間だけど、そこには、日本企業もかなり進出してきているから、そこで店をひらけば、ゆうゆうくらせる」みたいなことをいっていた。彼女は、土曜日と日曜日は、OLの仕事はないから、日本語の語学学校にいっていて、午前9時から午後4時まで日本語を勉強している。私の中国語よりはかなりうまい。それにしてもすごいハードワーカーではないか。週日は、OLとして9時5時をこなしたあと、カラオケ・クラブで午後7時から午前1時まではたらく。土日は語学学校で9時4時をやって、カラオケ・クラブで夜働く。休みは月に2日しかとらない。彼女が店のトップだから例外なのではなくて、他の子もみながんばっている。やわらかい話のつもりだったが、意外に身を引き締める話になってしまった。



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