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新上海の風:第三回
  意味グレード

 O電気で、音源関連の半導体の開発部門のトップのMさんは、もとは、ロックミュージシャンだ。いまでも、カラオケにいくと、「現役」で、中国語の現代的な早いテンポの歌を熱唱する。そのMさんは、中国で携帯電話などの音源(着メロその他)も開発している。彼は、どういう音が、中国で受けるか、中国人の開発スタッフとともにいろいろ研究した。音質、メロディー、リズム、などいろいろ変えてみた。中華風、和風、欧風、といったスタイルもいろいろためした。そしてひとつのことを発見した。こうした要素では、まったく、中国人が気に入る音を探し出すことができないと。では何が、差別化要因になるのか?それは、「音の大きさ」であった。一定以上のボリュームがあること、それが受ける、条件だった。ここまでの私の記述は、酒の席できいたこともあい、多少不正確かもしれないが、中国で生活する私の常識とも符号する。彼らは、とにかく声が大きい。そこには、中国の学者先生による、社会学的な説明もついていて、いわく、中国は人が多いので、大きな声で話さないときいてもらえないからだと。でも、私が昔暮らしたアラブは、人口はそんなに多くなかったけど、やはり、ずいぶん、話声の音量が大きかったが。
  さて、以上は、前置きで、Mさんが、考えた、「なぜ、中国の人は、大きな音を必要とするか?大きな音を好むのか?」という仮説が面白いので、それを紹介したい。
  ご存知かもしれないが、中国語の母音には4声といって、すべてメロディーがついている。高い音符を1秒つづける第一声。中くらいから高い音に移る第二声。中くらいからいったん下がりまた上がる第三声。高いところから中くらいに下がってくる第四声。ちなみに、日本語はフラットである。英語も、母音だけとればフラットである(センテンスではイントネーションがあるが、ここの音にそういう上下変化はない)。おそらく、すべてを漢字で表わすせいで、同音意義語が極めて多い中国語は、同音を少しでも識別するために、同じ音でありながら、抑揚で差異を生み出した。たとえば、あーというのも、「あー」「ああ」「あああ」「ああ」みたいな4種類ができる。
  そこで、結果的に、中国は、単音あたりの「意味が濃い」。日本語でも、漢字をたくさん使えば、字数が節約できることからも推察されるだろう。漢字だけで日本語をかけば、字数は少なくてすむ。
  実際、Mさんが、日常使うような表現で、日本語と中国語を比べると、ならしてみると、日本語は、中国語の1.5倍から2倍の長さになる。話すのに要する時間もそれくらい日本語が長めになる。それだけ、中国は、意味の濃度が高くて、効率がよい。
  しかし、世の中、いいことばかりではない。そういう効率的な漢字を学習するには、膨大な時間がかかる。そればかりではない。同じ音で、4つも識別するには、それなりの音量をださないと、識別できない。小さい音では、4つの区別がわからない。だから、中国人同士も、電話で話すときに、何度もききかえしている。だから、音を大きくせざるを得ない。効率の代償を音量で支払っている。
  なるほど。人口が多いという説明より、この言語学・音楽的な説明のほうが、私にはもっともらしく響くが、読者のみなさんはどうだろうか。
  しかし、私は、信じやすいけど、疑い深い人間だ。そこで、このMさんの意味濃度仮説を、何人か、中国語に詳しい人にきいてみることにした。そこでも、また興味深い、仮説がでてきた。次回は、それについてお話ししたい。



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