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朝日新聞BE
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朝日新聞BE 【No.2】

 社長交代の季節だ。近年、日本の代表的企業でも、旧来の序列を飛ばして、ポテンシャルの高い人を社長に選ぶことが珍しくなくなってきた。変革ののろしはトップから、という鉄則通りに、企業がようやく行動し始めた。
 役員でもない部長を、いきなり社長に抜擢(ばっ・てき)した百貨店の大丸も、その一例だ。そういう場合、周囲はもちろん、本人も「なぜ自分が……」と驚くぐらいの「意外性」と「偶然」が、過去との非連続性を象徴し、変革のトリガーとなる。
そもそも、「意外性」や「偶然」は、キャリアを考える上で結構重要なのだ。
 同僚もこう言っていた。
 「経営コンサルタントになりたくてなった人で成功する人は少ない。たまたま何かのきっかけで、やってみたら結構面白くて、だんだんはまっていく。うまくいくのはそういうケースだ」
 コンサルタントに限らず、そういう人が、実は多い。
 なぜ、うまくいくのか?
 「偶然」がポイントだ。そのおかげで、過度の期待や気張りなしで、自然体で仕事に入れる。始めたら、意外に面白くて、続けているうちに、はまる。気がつけば、それが「自分の本当にやりたいこと」になっている。
たとえば、某輸送機メーカー勤務のYさんは、30歳前後で偶然、労組委員長になる。志願したわけではないが、「名委員長」として活躍する。その後、職場に戻り、40歳で、労組経験を買われてリストラの責任者に抜擢される。イヤだったが、「コストカッター」の異名まで得る。
 厳しいクビ切りをしたにもかかわらず、あまり不満が出なかったのは、労組時代の人脈で、リストラ案の作成・実行チームに最適の人材をそろえたことと、労組で磨いた対従業員コミュニケーション力のおかげだった。この仕事で社内での評価が高まり、社長の目にとまって、50歳で、某製品の開発部門の責任者にのし上がった。
労使一体型の企業が多く、労組委員長経験者が出世するのは、それほど珍しいわけではないが、「意外性人事」といえるケースではあろう。
 この逆が、エリートコース人事だ。コースにのれば、普通は「してやったり」だろう。しかし、これは「罠(わな)にはまった」にすぎない。
 エリートコースの仕事は、文字通りそれまでのエリートたちが作ってきた仕事だから完成度が高い。それを自分の力で変革するのは至難の業だ。それに、「遊び」は許されない。それまで決められた通りのことを、正確にやるように強いられる。
 結局、エリートコースでは、自分のアタマでゼロから考えて何かを創(つく)る体験はできない。自分の真の実力発揮の機会には恵まれない。だから地位を得ることはできても、実力は磨けない。
そう考えれば、意に添わぬ「余り」の部署に追いやられたときこそ、チャンスである、とも言える。
 当初はショックかもしれないが、「偶然」と「意外性」の鉄則を生かして、自分自身の良さを自然に出してがんばれば、実力が磨かれ、道は開ける。会社人生万事塞翁が馬なり。




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