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月刊ロジスティックスIT

努力の原動力:「やりたいことパワー」と「やれることパワー」
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前回お話したように、自分のやりたいことを明確にするとあなたの会社が違ったものにみえてくる。あなたを閉じ込めていた箱としての「会社」が、あなたの夢を実現する「宝の山」にみえてくる。といっても、立派な会社であればある程しきたりもご立派だし、「抵抗勢力」にも箔がついている。だから、あなたのやりたいことの実現にむけて会社を活用するためには、ある種の「したたかさ」が必要だ。
まず、あなたがまだ会社に入る前の段階で会社を選んでいる段階を考えてみよう。その際のポイントは、自分という資産が最大のリターンをうむ「投資先」を選ぶつもりで会社や部門を選択することである。あなたは、自分という資産を投資するヒューマン・キャピタリストだ。私はシリコンバレーにいたとき、とあるカフェで、起業家とベンチャーキャピタルが話をしているのを盗み聞きしていた。30分くらいたって、二人が別れる段になって、私ははじめて自分の英語力のなさを思い知らされた。起業家だと思った人は、実は採用担当者であった。ベンチャーキャピタルの方は、採用面談を受けていた人だった。なぜ私が誤解したかというと、採用面談を受けていた人が、あたかもベンチャ-キャピタルが投資先について精査するような質問をしていたからである。また、採用担当者が、いかに自分の会社が投資のしがいがあるかを説明していたからである。私の誤解はその意味で正しい誤解だった。それはともかく、会社選択においては二つのことが必要だ。一つは、自分という資産について、どういう実績があるのか、何が強みなのか、しっかりまとめておくことだ。それも、自分がやりたいことを実現する方向でいかにも役立ちそうな形でまとめておくことが必要だ。もう一つは、投資先候補について投資家の目で質問しまくることである。
採用と同様に異動についても見直そう。日本の組織を前提に考えると、異動は採用以上に重要かもしれない。これまで、人事異動というと、よほどの不満分子以外は人事部のいう通りに動いていたのではないか。しかし、これからは資産の投資先を選ぶ投資家の目で、最もいい投資先を発掘し売り込んでいくという攻撃的な態度が必要である。といっても、だったら転職しようと短絡的に思うことはない。多くの場合、あなたの会社はあなたが「成長するための機会の集合」である。会社にはさまざまな部署やポジションがあって、さまざまな「役割」を磨くチャンスがある。プロは、役割という器を次々と乗り換えながらヤドカリのように成長していく。ところが残念ながら、多くの場合、今のあなたの成長に最適な役割がどこにあるのかがわからない。特に会社には「目くらまし」がいくつかあるのでだまされないように注意しよう。代表的な目くらましが「エリートコース」だ。エリートコースは、代代のエリートが練り上げてきているので、仕事のやり方が完成されている。だからそこに入った人は、それを受身で身に付けるという行動パターンに染まる。しかもエリートコースにはOBが沢山いるから箸のあげおろしまでみられてしまう。新しいことを切り開く経験や失敗から学ぶ経験は、エリートコースでは得難い。じゃあどこにあなたを成長させる役割が潜んでいるのか。「自分がやりたいこと」を羅針盤にして探すのだ。といっても、ぴんとこない人は、自分の会社で、「あの人のようになりたいな」という人を思い浮かべてみるとよい。そして、その人についての異動経路を調べるのだ。その人についての情報を集め、思い切って本人にも会って話をきくとよい。会社において見事に成長した人は、ほとんどの場合、その異動経路に成功の鍵がある。多くの場合、それはエリートコースでも窓際コースでもない。問題や可能性を沢山もった試練コースの組み合わせである。でもその話をきくとコロンブスの卵的になぜ成長したか納得できるから不思議だ。もちろん、そのように自分で希望して異動する以上、あなたはいやがおうでも成果をあげざるをえない立場におかれる。それがまたあなたの成長をうながす。
さて、以上の採用と異動で問われるのは、投資先の選別とともに、あなた自身についての客観的な理解である。後者については、会社がもつ「人材評価機能」を活用すべきだ。それなら大丈夫、うちの会社には人事評価制度がある、と思うかもしれない。特に、最近は成果主義の普及とともに、評価制度も以前よりは改善されてきた。上司から評価のフィードバックを行う会社も増えてきている。だが、多くの場合、そこで行われるフィードバックは、あなたの現実を直視するには不十分だ。あなたがもし成長を望むなら、評価でも攻めるべきである。どう攻めるか。まず、あなたの実績と実力という現実を、事実として評価者に理解させることが必要だ。それには、あなたが今期あげた成果とその成果を生み出したプロセスと行動についてきっちり説明することが必要だ。それも単に小学生の遠足報告ではなくて、あなたが考えたことや他人に働きかけた内容や自分のイニシアティブで行動したことや工夫したことなどを事実としてきっちり説明する。その上で、厳正な自己評価も説明する。自分について正確な評価をすることが目的だから、決して評価をあげようなどせこいことは考えない。だから成果のみならず失敗についても説明させてもらう。そこまで情報を共有した上で、上司から彼の経験に基づく助言をうける。例えば、あなたの実績実現過程であらわれた強みをさらに伸ばすには今後どんな仕事をしたらよいか、どんな役割があるのか、等である。上司から助言させることは、今後上司があなたに与える仕事にいい影響を及ぼすということにもつながる。実は、以上の手は、私が評価者研修などで評価者(上司)の人達に「とにかく部下の行動と思考の事実を具体的におさえることがすべてに優先します」といっていることを、逆手にとった方法である。「稼ぐ人」にとってはセルフマネジメントが基本であり、評価も自己評価が基本となる。だから評価者とは上司ではなくてあなたである。上司は自己評価を映す鏡にすぎない。
会社の活用法はまだ沢山あるから次回もこの話を続けよう。


      


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