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月刊ロジスティックスIT

努力の原動力:「やりたいことパワー」と「やれることパワー」
−− Part5−−



前回は、やりたいことの実現にむけた「したたかな会社活用法」として、目標、プロセス、プロジェクトの活用方法についてお話した。今回は、「評価と報酬の活用方法」についてお話したい。
会社員の生活は、「評価」にはじまり「評価」におわる。人事考課とか業績評価などは、実は会社における「評価」氷山の一角にすぎない。心理学的知見によれば、人が出会うと始めの数分のうちに、相手についての基本的なイメージを形成してしまう(スキーマといわれる)。もし「キャメル君は仕事ができる」というスキーマができればラッキーだ。仮に少々の失敗をしても相手は、「キャメルのせいじゃなくて不可抗力」などと思ってくれる。逆に「キャメルはできない」と思われたら不運。少々いい仕事をしても「どうせ上司が助けたのだろう」とか「ついていただけだ」などと思われる。さらに、その相手が、キャメルについてうわさ話でもしようものなら、先入観的評価は伝染する。気が付いてみると、キャメルが何をするかに関係なく、先入観的な評価が、社内で大手をふって一人歩きしているかもしれない。評価は気まぐれな魔物だ。マイナスの先入観は、アゲンストの風となる。プラスなら追い風。そんな評価をどうやって手名づけるか。
まず、評価を変えようなどと思わないことだ。すでに存在する評価を認めてしたたかに使うことを考えよう。
例えば、自分のやった仕事について「あそこがちょっと問題だな」とかいわれると、自分の正しさの主張や言い訳を並び立てたりしたくなる。「防衛的受け方」である。そういうときに、防衛の代わりに、「どんな評価も、自分の成長に役立つものだ」という呪文を3回唱える。呪文を唱えることで、問題の指摘をクールにとらえる。さらに攻めに転じてみよう。指摘された問題点について、「その点、もうちょっと説明してもらえますか?」とこっちから質問していく。こっちが素直に質問すると、相手が仮に当初こっちを攻撃しようとしていても、その攻撃性が緩んでいく。
評価の魔性を、さらに積極的に活用する方法もある。例えば、あなたが自分のやりたいことの実現にむけてプランを練っているとしよう。そういう場合、プランのアウトラインができたところで、いろんな人から評価してもらうとよい。男性ばかりでなく女性からも、同年齢からばかりでなく若い人や年配の人からも、評価をきいてみよう。私は、あるテーマについて、男女両方20名ずつに個別に考えをきいた。男性からでてくる意見や助言は、その場では「なるほど」と思う。でもすぐに、それなら自分でもわかっていたことだな、と思う。意外性にとぼしい。他方、女性の意見をきくと、「なんでそんなこというの。そういうの聞きたいんじゃないよ。わかってないな」という偏見が、私の中で頭をもたげる。でも一日くらいたつと、彼女のいったことが妙に気にかかる。そのうち、「あ、そういうこといいたかったのか。それは自分では気づかなかったポイントだ。」私は、女性の魔性に、妙に啓発された気分になった。
人から評価をきく前に、自分の考えや自己評価を簡潔にまとめておいて、あなたの軸をしっかりさせておくことも、評価活用のコツである。自分の考えや評価を一枚の紙にまとめておくと、評価してもらいやすくなる。しかも、人からきいたことをその一枚の紙に次々と書き足していくとよい。あなたの軸(=紙)さえしっかりしていれば、否定的なコメントでさえもスパイスとして効いてくるはずだ。
面白いもので、評価をありのままに認め、ひたすら自分の成長のために使おうとしていると、評価がいい方向に変わってくる。気が付いたら、評価の風向きが、アゲンストからフォローに変わっているかもしれない。あるいは、アゲンストの風が気持ちよく感じるくらいあなたが成長しているかもしれない。
さて、給与はどう活用するか。成果主義がひろまる中で、多くの人は、すこしでも多く自分の成果を認めてもらって、自分の給与をあげようとする。残念ながらこのアプローチは誤りである。給与に期待すべきことは、あげることではなくて、なるべく「市場適正価格」に近い水準で払ってもらうことだ。どうしてか。私自身の例でその理由を説明しよう。私は、コンサルティングを5年くらいやった時点でワトソンワイアットに移ろうかと考え出した。転職の条件はすべてそろっていたのだが唯一の問題は給与だった。私が前の会社でもらっていた年収はワイアットが想定する市場価値と比べると200万円くらい高すぎた。自分としては、ワイアットの方が面白そうで、このくらい下がってもいいや、と思ったがそうは問屋(家内)がおろさない。「あなた、外資系で移る場合、年収はあがるのが普通でしょ。前のところ首になるわけでもないのに」と厳しいご託宣。外務省をやめて前のコンサルティング会社にはいるときは何一つ不満をのべなかった家内もへんに成長していた。家内の言葉で私も迷いだした。そのとき、ワイアットの当時の社長から殺し文句をもらった。「山本さん。損益分岐点をさげると自由度がひろがるよ。」至言である。給与を市場価格よりもらいすぎるとあなたは移動の自由を失う。給与にあわせた生活をするから、給与を下げることができなくなる。至言に説得された私は、娘の幼稚園受験の面談で、アラブじこみのひげをそることを条件に、「問屋」から許してもらって晴れて転職した。
給与については、稼ぎ方も重要だ。「消費的な稼ぎ方」ではなくて、「投資的な稼ぎ方」を工夫してみよう。消費的な稼ぎ方では、あなたが体力と時間を消費したことに対する対価としてお金をもらう。この場合、あなたの側に残るのはお金以外には疲労のみである。他方、投資的な稼ぎ方では、例えば、ある成果を出す際に、その成果を生み出す場面以外でも使えるような仕組みを考えたり、後でもつかえるスキルを身に付けるように努力する。投資的稼ぎかたで稼ぐと、お金とともに、仕組みやスキルといった知的資産が残る。投資的稼ぎ方で仕事を続けると、あなたは立派な資産家になれるかもしれない。




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