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月刊ロジスティックスIT

努力の原動力:「やりたいことパワー」と「やれることパワー」
−− Part1−−



IT革命の進行に伴い、ロジスティックの「神経」や「遺伝子」は進化している。しかし、人間の脳や遺伝子にはまだそうした進化の波は及んでいない。そのせいか人材の成長に関する限り「石の上に3年」は依然として真実である。今も昔と同様に、成長するためには「継続した努力」が必要だ。人間の能力など大して差はないから、どれだけ集中してあることをやり続けられるかが、成否の分かれ目だ。努力し続ければそのうち、運の女神も微笑みかけてこようというものだ。
さて、私が最近注目しているのは、「努力の原動力」である。努力が必要なことは昔と同じだが、努力の原動力は、革命的に変化した。
昔は貧しさの逆境からはいあがり、生活レベルをあげることが「努力」の原動力だった。昔の映画をみるまでもなく、お隣中国の様子をみれば、このパワーのすごさがわかる。残念ながら、基本的な経済成長に成功した日本では、貧しさからの脱却パワーは使えない。何が、新しい「努力の原動力」になりえるか?私は、「やりたいことだから努力する」パワーと「やれることだから努力する」パワーだと思う。
まず、「やりたいこと」パワーは、私がこの5月まで暮らしていた米国のシリコンバレーでいやというほど見せ付けられた。シリコンバレーは技術者の町だが、例えば、シリコンバレーにあるスタンフォード大学でマスターや博士号をとった若い人は、自分のやりたいことを実現するために、20台や30台を全速で走り抜ける。その成功者が、ベンチャーを起こして大儲けする。ベンチャーキャピタルやベテラン起業家やコンサルタントなどが、そういう若手の夢の実現を助ける。仮に起業に失敗しても、やりたいことをやった充実感は残るはずだ。これに対して、私の日本人の友人で、日本の一流大学の工学部を出て、大手日本企業にはいり、研究や開発に従事した連中はどうなったか。おそらくはじめの10年間、その企業のしきたりを体と心に刻みこむことにかなりのエネルギーを使ったはずだ。「自分のやりたいことをやっていいよ。その応援をしてあげる。」などという話は聞かなかったはずだ。そのうち、夢を描くことも忘れていく。いやはじめからそんなものはなかったのかもしれない。やりたいことで燃焼して成長したシリコンバレーの青年の10年と、しきたりを覚えてやりたいことを忘れていった友人達の10年の差はあまりに大きい。
やりたいことパワーの炸裂はシリコンバレーのみではない。米国ハイテク業界のトップタレントをみても同様である。彼らにとってお金は努力の主たる原動力ではない。例えば、マイクロソフトのビルゲイツ、アマゾンのベーゾス、AOLのケイス、シスコのチェンバース、アップルのジョブズ、等は、いずれも裕福な家庭の出身だ。こういう人達の生い立ちをみると、努力の原動力はやはり「やりたいことをやる」アスピレーションである。逆境からはいあがる努力とは音色が異なる。こういうアスピレーション型の努力は、非常に軽快だ。例えば、アマゾンのベーゾスの話にこんなのがある。彼は、投資銀行家のキャリアパスを歩んでいたが、1994年当時、インタネットが今後2000倍のペースでのびるという記事を読んで投資銀行を辞めてインタネットを利用した起業をしようと決心する。辞める決心をしたらその日の内に引越しトラック呼んで、「とにかく西に走って」と走らせてしまう。その時点では、アマゾンの構想など全くないから行き先も決まっていない。同時に、奥さんにレンタカーを運転させて、ベーゾス自身は後部座席にすわって、パソコンをたたいてビジネスプランを続ける。そのレンタカーの社内から引越しトラックに電話して「シアトルにむかって」と指示。ベーゾス自身は、その後各地をめぐって人材を採用したり、助けてくれそうな人をみつけたりする。そうしながら、シアトルの弁護士に電話して、会社を設立させたりなどの手も打つ。まさに、走りながら考え、どんどん動かしていく。このスピード感と軽快さが、アスピレーションから生まれている。
さて、もう一つの原動力の「やれること」パワーはこんな感じだ。ワールドカップの最中、私は欧州に出張していて、英国チームのオーエンの話を読んだ。ワインまじりで正確な再生ではないがこんな話だ。「ストライクがはいらなくなると、どこが悪いかとあれこれ考えていろいろ答えを思いつく。でもその答えは間違っている。あたふた悩んでもしょうがない。自分の力を信じてやるべきことをやりつづけるセルフ・ビリーフが大切だ。結果はそのうちついてくる。これまでもそうやって結局スランプを切り抜けたという体験がこのセルフ・ビリーフを支えてくれる。」オーエンの考え方は、バンドーラという心理学者が行った「効力感(perceived self-efficacy)」の研究で裏付けられている。効力感が高い人とは俗な言葉でいえば、自分は「これができるという自信」のある人だ。そういう人は、多少の失敗に直面しても「自分には成功する能力が備わっているからいつか成功できる」とじっくり構えて努力を継続する(自信があるからなまける、というのじゃない)。首尾よく失敗の克服に成功すれば、効力感は益々高まる。他方、効力感が乏しく無力感に侵食された人は、ちょっと失敗すると、「自分には実力がない。だめだ。」とすぐにあきらめて、益々自信を失い、無力感の深みにはまっていく。
では、「やりたいこと」パワーの元となる「やりたいこと」をどうやってみつけるのか?あるいは、「やれること」パワーの元となる「やれること」をどうやって創っていくのか?
次回、そのヒントについてお話したい。


      


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