TOP > 家族はキャメルを超える > Hirokoがみたシリコンバレー












 はじめに
 さかな
 返品歓迎
 
 甘味
 チップ
 贅沢



 
はじめに
 シリコンバレーに2年1ヶ月滞在して、東京に戻ってきた。私は生まれて40年東京から離れた事がなかったから、最初シリコンバレーを車で走ったとき、やけに田舎に感じた。高い建物はなく、道路には穴が開いている。生まれて初めてスカンクの強烈なにおいに驚き、庭に来る鴨の鳴き声を聞いた。
 シリコンバレーは筑波とちょっと似ているかもしれない。少し前まで田舎で、現在は先端技術の研究が進められているところ。以前は果樹園が並び、日本人は庭師として生計を立てていた。でもやはり違う。ここはちょっと夢のある田園地帯。サンドヒルロードを走ると赤いフェラーリやポルシェに出会い、運転席に座っているのは40才以上のおじさん。BMWの運転席は若いチャイニーズ。ストックオプションで手に入れたのだろう。
 新参者は山側ロスアルトスヒルズ、ウッドサイド、ちょっと前なら街中の木の茂る一帯アサトン、パロアルトに豪邸を構える。山側のくねくね道を上ったところの崖に家を建て、海を見下ろすロスアルトス。何年周期で大地震が来るのが怖くないのかと思うのは日本人だけ。馬でお買い物に来るお客様用に駐馬場があるウッドサイド。ちょっと日本と違う。
豪邸の買い方はいきなり新築というのはめったになく、中古を買うことがほとんどのようだ。
 シリコンバレーにはサン、ヒュウレットパッカード、インテルがあり、中国、インド、ロシア等々遠い国から人が集まってくる。だから不動産価格は高い。景気が後退した現在でも、2ベッドのアパートが30万円近い。築40年のアパートはペンキの厚化粧でも、なぜか東京の新築マンションより心地よく思えるのは、広い芝生の庭のおかげだろう。ベランダにリスが来るなんて、東京では夢のよう。
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さかな
 日本に帰ったら、おいしい魚が食べられることを楽しみにしていた。久しぶりにスーパマーケットの鮮魚売場に行った時、ケース一杯の魚に感激した。売場では「さかな、さかな、さかな」と知らない曲がかかっていた。手巻き寿司を作ろうと、生サーモンのさくを買って帰った。一口食べると、薬くさい。子供も、主人も異臭に気が付いた。
 翌日電話で尋ねてみたが、原因がわからない。しばらくして担当者から連絡が入り、サーモンの塊を輸送する時に使う袋の消毒薬がよく乾いていなかったのが原因とのことだ。そうか折角の魚も塩素がついているのか。
 カリフォルニアでは魚売場は大きくないが、冷凍品でないものも僅かだが手に入る。サーモン、ハワイのマヒ、モントレーの小いか、かににはフレッシュと表記してあり氷の上で輝いている。サーモンは春には天然のワイルドサーモンが手に入る。値段は養殖物の2倍以上だが、それでも1000円出せばたっぷりお刺身を堪能できる。ツナの缶詰はアジアからの輸入品を薄塩の水煮に加工してあり、大きな缶が130円から250円位で買える。日本のツナ缶ではアメリカンサイズのサンドウイッチには小さいなあ。
 アメリカの当局FDAは魚は水銀などで汚染されているから、妊婦や子供は1週間に摂取して良い量を決めている。さばは好ましくないという記事があったが、青魚は頭や体に良いDHAを多く含むのかなと思っていた私はがっかりした。
 狂牛病が騒がれたが、日本ではカリフォルニアの店のようにホルモン剤なし、無農薬の飼料で育ったと明記した肉は売られているのだろうか。魚も肉も怖いとなったら、何を食べたらいいのでしょうか。
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返品歓迎
 アメリカでは車で買い物に出かけるから、つい巨大なカート一杯に買いこんでしまう。ウオールマート、ターゲットという雑貨のスーパーマーケットにいくと、CDからバーベキューコンロ、クリスマスツリー、歯ブラシ、ソックス何でもそろう。会計のレジは長蛇の列だが、入り口近くにもう一列人が待っている。それは返品の列。
 初めて私が返品したのは、掃除機だった。ファスナーのついた長い袋にゴミがたまって行く形の掃除機だった。どうも隙間から塵がでてくる。8千円のこの掃除機を2万円くらいの立派なファントムという名のいかにもパワーのありそうな掃除機に替えて貰い、差額を払った。私の返した物はもう店頭に並べるとは思えないが、理由をいうと事務的に手続きは進められた。
 日本で買ったものを返品しようとすると、だいたい二通りの対応がある。顧客は文句をとうとうと述べ、店側は平身低頭し謝る。そしてかわりに、同製品に交換してくれる。返金してくれることは少ないだろう。第二のケースは既に顧客は購入しているから、その製品自体を修理してくれる。包装をほどいてしまっているから、なかなか新品には買えてくれない。ましてや使い勝手が悪いから他社の製品に替えて欲しいなどという客の要望にはまずは応えてもらえまい。
 ウオールマートの列を見ていると、多くの人が「気に入らない」という理由で返品し、返金(またはクレジットカードによる返金)を受け取っていた。製品そのものに欠陥があるわけではなさそうだ。日本の場合お金を払ったその瞬間からその商品はあなたの所有物となる。
 アメリカの店員さんにアドバイスを受けたことがある。子供を連れてきていないのでサイズがわからないから子供服を明日まで取り置きをして欲しいと頼むと、「買って合わないなら、返品すればいいじゃないですか。」
 主人がNというダウンジャケットの店で目撃した。60過ぎの男性が一年前に買ったジャッケットを返品したいと店員に交渉をしていた。レーシートはない。しかし、他の新品と替えてもらえた。リターンポリシー(返品の条件)はどうなっているのか?
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 日本に帰っておいしいスパゲッテイーを食べに行った。いかもある。たらこもある。迷った末、いか、たらこ、うに全部のっている和風スパに決めた。とろっとしていて、おいしい。でも、段々口の中が塩辛さで一杯になった。子供とフライドポテトを食べたときも、ガーリック風味のバター味がしょっぱくて、塩を払ってみた。
 カリフォルニアではイタリアン料理が人気だが、はじめはどうも薄味な気がしていた。いつのまにかそれに慣れ、今度は日本の食べ物が塩辛い。アメリカの食品は塩分、そしてもちろん脂肪分に気をつけていることが、包装の箱や袋に書いてある栄養表示からうかがえる。SODIUM FREE(塩分なし)、FAT FREE(脂肪分なし)のポテトチップがある。まったく塩気のないポテトチップではそれこそ味気ないだろう。飲み物のラベルにも、塩分が含まれていない事を強調しているものがある。
 日本のインスタントラーメンの外袋をみたら、アメリカの当局が決めた一日の必要塩分量の100%以上も塩がはいっている。でもカリフォルニアで久しぶりに日本のラーメンが食べたかった。だから、スープを残すことにした。
 子供が日本のテレビ番組をみて、喜んで私に教えてくれた。天然の海の塩は血液をさらさらにするらしい。海の塩や岩塩をなめて見ると、塩辛さの中にほのかに甘味を感じる。自然の塩にはミネラルが含まれている。日本は昔瀬戸内地方の塩田で塩がつくられていた。塩田を工場地帯に変え塩は国の専売事業になり、日本では青いマークの塩の袋を買うしかなかった。そのまずさを補うために、赤いマークの化学調味料が売れた。
 成人病になっておいしくない病院食を食べなければならない前に、気をつけなければ。
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甘味
 アメリカ人はあんなに塩分に気をつかっているのに、糖分には甘い。人気のクリスピークリームドーナツにはたっぷり砂糖衣がはりついている。子供の誕生日に学校の事務室に持っていったら、職員のみなさんが喜んで仕事の手を休め、早速おやつの時間になってしまった。クリスピーの人気はガラス張りの店内でドーナツができる製造工程が見えるところにもある。ガラス越しにじっと見ているのは、何故か男性が多い。12個が500円もしないから、みんな箱で買って帰る。
 日本のレシピでお菓子を作ると甘味が足りないから、アメリカの子供達はゴミ箱に捨ててしまう。食べ物を捨てることに罪悪感はないから、卒業パーテイーで注文したケーキが余ると、お母さん達もポイと捨てる。(でも、レストランの食べ残しはみんな包んでもらって、犬か自分達のために持って帰る。)
 シリコンバレーで一番人気のケーキは、クリントン大統領好物のホビーズレストランのブルベリーケーキ。シンプルなケーキでスポンジにブルベリーの粒が入っているだけのもの。クリームはなし。クリントンは娘のチェルシーさんやアップルのステイーブジョブスを尋ねた際、ホビーズに立ち寄った。ホビーズはふらっと昼ご飯を食べに行くような普通の店構え。私はこの店のレモネードが好きだった。
 おいしいケーキを食べたければ、イタリア人の店でデザートを注文すれば外れがなかった。テイラミスはじめそろっている。
 甘いもの好きがいけないのか、アメリカでは体重が100キロを越えていそうな人を度々みかけた。小学生は小枝のような手足を持つ子どもが多い。日本人の子供の方がよほど太股は肉付きが良い。それが6年生になると、男の子も女の子もちょっと横に成長する。縦に成長したハイスクールの頃は男女ともに美しい。小学生の子供を持つ頃、夫より体重がありそうなお母さんになってしまう。
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チップ
 チップは何かと面倒くさい。レストランで食事をすると15%から20%のチップを課税前のお勘定に足してわたす。レストランのときはゆっくり食べた後だから、頭の中の電卓を使ってゆっくり計算できるが、タクシーとなるとどんどんメーターが加算されていくからこのくらいと計算できたと思ったら最後にまたメーターの数字が動いたりする。
 駐車場で自分の車を持ってきてもらう時としまってもらう時ドル紙幣を渡すのも面倒だ。なにか自分の渡し方がぎこちないが、もらう方はさすがに慣れていて、「楽しい一日を」なんてにっこり言ってくれて扉をしめる。あっ、20$札しかないなんてことがあった。前のアメリカ人もキーを渡したが、チップは手渡していない。さっき行きに渡したから、いいかと渡さなかった。さて、翌日ホテルをチェックアウトして、いざクルマで帰宅しようと思ったら、バッテリーのコンセントの口が緩んで壊れている。疑うわけではないが、前日のチップを渡さなかったことを思い出した。
 アメリカ人がレストランでチップをわたすときは、いっときウエーター、ウエトレスと世間話をしてうまく渡している。ホノルルのレストランでは日本人がチップを渡すのを忘れるので、お勘定にチップが印字してあった。はじめは嫌な気がしたが、まあ暗算するより楽だとおもえばいいか。わたしなんかは、おいしい料理を作ってくれたシェフにお礼をしたいとおもうが、給仕人の気が利くと飲み物のお代わりがもらえて料金は追加されないのだ。これはだいたいアイステイー、コーヒー、レモネードだけ。乾燥したカリフォルニアではつい何杯も飲んでしまう。パンにつけるオリーブオイルにバルサミコを加えてほしいとも頼める。
 シリコンバレーでは景気がかげり、高いワインを注文する客が減り給仕をする人たちの収入が減った。ホノルルは本土や日本からのお客さまでホテル、レストランは満員に見えたが、9.11のあとまだ本調子ではないそうだ。
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贅沢
 ショピングセンターを沢山の紙袋を肩からかけたアジア系の家族が歩いていた。母親も小学生の子供も小奇麗な身なりから、日本からの旅行者か。春休みだし、アメリカに遊びに来たのだろう。でも、ブランド好きらしい両親が目指すような高級ブランドは普通のモールにはない。
 しかし、ラスベガスのモールには高級品が並んでいる。そういう店で一生懸命品選びをしているお客様は韓国人が多い。日本からの旅行者で免税店は賑わっている。アメリカ人は高級なバックを持ち歩かない。バック自体もあまり持ってない。車のキーだけを握っている。買い物しているときも簡単な小さな黒いハンドバックだけ。カリフォルニアでブランドのバックを見たのは、2回。スーパでバーキンを持っていたチャイニーズと公文の塾にお迎えにきていた背のたかい白人。塾のあるメンローパークは高級住宅街のアサトンに近いので、ナニーがついて来る生徒が来るような町だった。
 服にもたいしてお金をかけてはいない。では何にお金をつぎこむのか?豪邸、高級車、自家用飛行機、会員制クラブ、別荘、スパ(美容エステ)などだ。そんなシーンにジンーズ、スニーカーで皆やってくる。そこにいる人は鞄や靴ではなく、自信に溢れた態度ときれいに削げたくるぶしを身につけて現れる。
 ロスアルトスヒルズの会員制のクラブでは、乗馬、テニス、プールが楽しめる。プールサイドにいる親子連れ。お母さんの髪はブロンドが多かった。このあたりは中国人の豪邸も多いのに、会員はあまりいないのだろうか。
 遠足の付き添いで母親4人がついて行った。バスのなかで夫の趣味に話題がなると、イギリス人二人、ユダヤ系オーストラリア人の妻達はぼやき始めた。夫がガレージで飛行機を組み立てて、場所をとって困る。三組ともシチズンシップ(市民権)は取っていない。シリコンバレーにはこんな物作りの好きな人々が世界から集まってくるのだ。
 ステイーブの庭には、プロペラのオブジェが回っている。家の中にも、天井からモビールがつるされ動いている。スタンフォードの工学部出身の彼はガレージで物を作るのが好き。海の見える家が素敵だ。そして、自分で設計して楽しむその少年のような気持ちが贅沢だ。
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