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家族の自律支援・構造改革
「自分だけならやりたいことをやるために、職場を変えることだってできるだろうが、家族がいるのでそうもできない。家のローン、子供の教育、娘の結婚もあるし。」といった考えが頭をよぎる人は決して少ないと思います。私もそう感じるときもありましたが、最近、この考えは前提が誤っていると気付きました。どういう前提かというと、家族の責任やリスクをあなたが一人でしょいこむ、という前提です。この前提のせいで、あなたの自由がうばわれるだけでなく、実は家族をあなたに依存させすぎることによって家族の自律も阻害されています。
かなりドラスティックな提案ですが、この際、リスクを家族のメンバー全員で分担する、そのためにあなたは「家族メンバーの自律」を支援する、という対応策をとることです。要するに家族の構造改革です。家族の自律度が上がれば、あなたの自由度が上がります。昨年の同時多発テロの後、私自身の身に何がいつ起こるかわからない、と思って次のような手を打ち始めました。

1(種まき): 家族各自の「やりたいこと」の発見と明確化を助ける。まず、「せっかく生きているんだからやりたいことやろうね、それが力を出すコツだから」という考えをおりにふれて吹き込む。同時に、具体的な例を紹介する(落ちこぼれだった少年が立ち直って周囲を驚かした例等)。「こういうふうに書くとプランになるよ」という雛型を示して明確化を助ける。
2(自覚): 各自の強み、弱みを、自分で直視させる。私の場合、家族は人材マネジメントの実験につかっているので、本書であげたような自己診断(性格・学習スタイル等〜を遊び感覚で利用するが、要は強みや弱みを「自己評価」させればいい。
3(機会): 強みを生かす機会や弱みを克服する機会をつくる。例えば、計算が嫌いで、アートが好きな子供なら、アート製作の計画作成など計算が必要な「場面」をつくって、計算力の必要性を体感させる。
4(助力): あなたの時間やお金やアイデアを提供する。お手本になる人やメンターも紹介する。ちゃっかりした息子は「この英語のカードゲームは僕のやりたいことで、英語にも役立つよ、イーベイで競り落とそう」とかいってくる。家内は自分で、あるイベントをやりたい、といってきた。私は、そのアイデアの具体化を援助したり、知り合いの紹介を通じて支援し始めた。
5(宣言): 自律支援プログラムを開始したと家族に宣言する。キャメル流の宣言は、「アエラと夕刊フジに、私がこの世から消えても、家族が楽しくたくましく自律して生きていけるように支援したいという記事を書くよ」という形で行った。宣言の前に、ステップ4までの手を小さなことでいいから打っておくことが肝心だ。宣言を先行させると、「またキャメルが変なこと言ってる」としか思われない。

宣言とあわせて、お金の問題について家族で相談することも極めて重要です。家計の出費を下げられれば、あなたの仕事の選択の自由度が高まります(収入よりもやりたいことを優先できる)。将来をみすえたマネープランも必要でしょう。私はまだこの作戦を検討中ですが、米国の友人の例をみると、企業や起業で稼ぐことか、生活の質を重視した生き方かのどちらかを選択しています。そして前者から後者に切りかえる場合に、自分の損益分岐点をさげる計算と実験を行なっています(この例は、この文章の次につけておきます)。
さて、子供を自律させようとすると、子供が自「立」する段階があるので、そこは親にとって結構やっかいで疲れます。反抗期がいち早くやってきます。例えば、どこかにでかけるというときも、親の意向だけでは決められません。兄弟がいたら、兄の意向をいれるとは弟は満足しないで、反対します。レストランに行くのでも、親は中華にいきたいが、子供は中華だけはいやとか、家族でゴルフにいこうといっても僕はゲームがいい、とかなります。自分で律することを教えるのですから、親の都合を押しつける作戦は控えるべきでしょう。「わがままいわないで親のいうことききなさい」は禁句になってきます。親の側の提案力と自分で律するようにしむけることが必要になってきます。偉そうにかきましたが、これは仕事同様に大変だなというのが正直な実感です。私は、時に手荒な手段で子供を叱ります。でも叱った後で、ほとんどの場合、「おれは疲れていたから、自律教を放棄して安易に伝統的な親権をふりかざしてしまったな」と気付きます。

●米国シリコンバレーの友人スティーブは、自営起業家・生活者
「あなたが自身はすでに起業家である。それが実際の起業だろうと、会社員だろうと、なんだろうと関係ない。事実として、あなたが自分をマネージしている。間接的に上司が命令しても、それはすべてあなたの許可のもとに執行される。あなたが最後の決裁権をもっている。キャメルカンパニーの社長はあなただ。たまたまつとめているワトソンワイアットの社長からの命令でも、あなたが最後の決裁者だ。だから責任と自由がある。はやりのことばでいえば、それは年52週、週7日、1日24時間ずっと営業中だ。あなたのために。」私は、この言葉をシリコンバレーで実際誰かから聞いた気もするし、夢でみたような気もするし、そのあたりはごっちゃになっているのですが、シリコンバレー的な表現です。そして、これは日本のビジネスマンや役人やフリーターにもすべて当てはまります。
私がシリコンバレーで仲良くなったスティーブは、文字通りの一人マイカンパニを創りました。彼の名刺も傑作で、「社長兼秘書」とかいてあります。
スティーブは、東部の名門私立学校を出て、スタンフォード大学の電気工学の学位とMBAをもつエリート。10数年前に起業直後のハイテク企業に就職。奥さんともそこで知り合い、夫婦の年収は最高で3000万円、しかもストックオプションももらっていました。しかしある休日、子供と遊ぼうとした際、子供が家政婦さんにくっついて離れず、自分達の方に全く近づかないことにショックを受けます。そこで奥さんが仕事をやめ、専業主婦になります。スティーブ一家の収入は半減しましたが、奥さんの表情は日に日によくなりました。それをみたスティーブは、自分も会社をやめようか、と考え出します。勤め先も創業時と違って大企業病が出始めていて人間関係にも疲れてきたところだったので、彼は2ヶ月の休暇をとりました。その間に、どこまで余計な経費を削れるか計算・実験します。夏休みの海外旅行の代わりに両親宅への帰省、子供を私立から公立に転校、外食の削減、車3台を車1台とバイク1台に転換してガソリン代節約、高級な服をギャップのカジュアルに変更、ベビーシッター廃止、等です。またストックオプションを行使して住宅ローンを返済した。結局、年収が700〜800万円までは下がっても、子供と遊ぶ時間の増大等のおかげで自分の満足度は落ちないと発見します。
同時に、彼は自分がやりたいことは何か、徹底的に考えましたた。「一人でこつこつやりたい」「一対一のコミュニケーションが楽しい」「プログラミングの腕はさび付いたが、人がかいたプログラミングをみるのは好きだ」「小さい子供とすごす時間を増やしたい」等と。休暇明けにあっさり会社をやめて「生活の質を高めること」と「自分の性格にあわせること」に焦点をあてて起業します。ホームオフィスで社員は自分一人。インタネットを使って世界中から1000名を越えるプログラマーを組織し、顧客企業のプログラミングを請け負う事業を始めました。一度も会わないプログラマーの質を見分けるのが鍵だそうで、テストや実際の仕事を第1回目は実験にしてスクリーンにかけるそうです。一時は年収が3000万円を越え、バブル崩壊後も当初は快調で、地元紙にも彼の大きな写真入りの記事がでたほど。しかし、最近は、景気の悪さから1000万円を切ってしまいます。ただし毎月会計ソフトで財政状況をチェックしていてまだ余裕があります。私は、スティーブの真剣なスマイルの中に「自分のスタイルで生きる」人の強さ、「家族を巻きこんでいる」優しさ、「お金をウオッチする」堅実さ、をみました。





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